「パスネット」払い戻し期限迫る! 期限を過ぎたらどうなるの?

首都圏にお住いの方なら、かつて一度は手にしたことがあるであろう、私鉄系のプリペイドカードシステム「パスネット」。Suica、PASMOの台頭ですっかり忘れ去られ、駅ではすでに利用できなくなっています。

元々「有効期限はありません」という触れ込みで売られていたパスネット対応のカードですが、実は多くの会社で、来年(2018年)1月末に払い戻し期限を迎えます。これを過ぎると払い戻しはかなり困難になることが予想されます。

もし、机の引き出しなどに眠っているカードがあれば、発行した鉄道会社に持ち込んで払い戻しを受けるようにしましょう。

実は、期限を過ぎてしまっても払い戻しを受けることは不可能とは言い切れません。が、かなりハードな交渉が待ち受けていると考えたほうがよさそうです。

「資金決済法の定め」とは?

しばらく前から、東京メトロの電車に乗ると「資金決済法云々」という題目で、SFメトロカードなどのプリペイドカードの払い戻しについて案内が出ていました。
随分と大仰な法律名ですが、資金決済法には何が書いてあるのでしょうか?

資金決済法の目的

資金決済法(正確には「資金決済に関する法律」)は、2009年に制定された、比較的若い法律です。

大体、法律の目的は第1条に書いてあるので読んでみますと、資金決済に関する「サービスの適切な実施を確保」し、「その利用者等を保護する」とともに「当該サービスの提供の促進を図る」となっています。

ざっくり言うと、プリペイドカードに代表される「前払い式の支払い手段」を発行する会社は、事前に政府へ届出あるいは登録を行い、保証金を供託して、会社がつぶれた際に備えなさいという中身です。

具体的な定めは「内閣府令」に

調べてみると、資金決済法そのものには、それほど具体的な規定はありません。ただ、第20条に「カードの発行を廃止するときは払い戻しを行うこと」と書いてあるだけです。この定めに基づき、各社はカードの払い戻しに応じているということになります。

払い戻しの詳細は内閣府令(正確には「前払式支払手段に関する内閣府令」)第41条にあります。
カードの発行・使用を停止した場合には、財務局長へ報告するほか、日刊新聞において公告すること、営業所や加盟店で払い戻しの掲示を行うことが定められています。

気になるのは払い戻し期間ですが、内閣府令では「60日を下らない一定の期間内」とされています。つまり最低ラインが60日です。かなりの短期間です。

パスネットの場合は、使用できなくなったのが2015年3月末なのですが、払い戻し期限は(発行元のうち数社を確認した限り)2018年1月31日までとなっています。つまり3年弱の期間を確保しているわけで、この点は良心的といえなくもありません。

期間内に払い戻さなかった場合の定めは?

では、法律上、期間内に払い戻さなかったらどうなると書いてあるのでしょうか?

内閣府令41条には、期間内に申し出がなければ、払い戻しの手続きから「除斥」されると書いてあります。

これはあくまで、資金決済法に基づく払い戻し手続きから除かれるという意味であり、払い戻しを100%受けられなくなるわけではありません。
以下、長くなるので章を改めます。

払い戻し期限が過ぎたら、カードは紙くずになるのか?

一番の関心事は、払い戻し期限が過ぎたら、カードは紙くずになるのか?ということです。

最初に結論を書きますが、払い戻し期限を過ぎても、払い戻しを受ける権利はあります。
ただし実際に払い戻しを受けるための手続き上のハードルは高くなります。また、時効という別の期限には注意する必要があります。

「除斥」の意味は?

この問題について、詳しく解説しているのが、一般社団法人日本資金決済業協会の発行している「前払式支払手段発行者からよくあるご質問」のQ29です。

前払式支払手段発行者からよくあるご質問
https://www.s-kessai.jp/businesses/faq/faq_maebarai_jigyousha(150724).pdf

これによると、プリペイドカードを買った人が有する債権そのものは、払い戻し期限を過ぎても消滅しません。あくまで、鉄道会社は「資金決済法に基づく払い戻しの義務」からは解放され、供託金の根拠となる「プリペイドカード発行残高」のカウントから、当該カード分を除外できるようになるというだけです。
つまり鉄道会社に対する「貸し」がチャラになるというわけではありません。

ただ、資金決済法という「払い戻しに対する強制力」は消えてしまったので、払い戻しを受けるためには、巷の借金取りと同様、個別に鉄道会社と交渉して債権の取り立てを行うことになります。

債権には時効がある。さて何年?

以上のように、資金決済法による払い戻し期間の終了は、即、プリペイドカードの「紙屑化」を意味するものではありません。

一方、債権には時効があり、あまり時間が経ってしまうと取り戻せなくなります。大昔の借金を取り立てることができないのと同じです。(正確には「時効の援用」により債権が消滅するという言い方になるようですが、元々専門家ではないので、不正確を承知で端折って書きます)

では、その時効はいつからカウントし、また何年間なのでしょうか?

まず「何年」のほうですが、一般的な商取引によって生じた債権(商事債権)の消滅時効は原則5年、ということが商法第522条に規定されています。これを適用するならば時効は5年です。

ところが鉄道営業法という法律があり、これの第14条に「運賃償還ノ債権ハ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス」とあるので、これを適用すると時効は1年となります。かなり短いですね…。

鉄道営業法は、文体から明らかなように非常に古い法律で、プリペイドカードを意識した内容にはなっていません。ここでいう「運賃償還ノ債権」とは、たとえば台風で運休になり使えなかった乗車券の払い戻しは1年以内でないと受け付けませんよ、といったことを意図したものではないかと思います。
プリペイドカード購入により生じた債権がどちらに該当するのか、正確なところは裁判でも起こさないと結論が出ないかもしれません。

時効のカウントはいつから?

次に「いつから」のほうですが、現実的には「カードが使えなくなった日から」と主張する鉄道会社が大多数だろうと思います。
以下、素人がにわか勉強で考えたことなので、正確な回答は弁護士にでも問い合わせていただきたいと思います。

鉄道会社に都合のいい解釈をすれば、プリペイドカードを買った日から時効のカウントがスタートしているという考え方ができそうです。

ただ、債権に関する時効は、債務者(この場合、鉄道会社)が債務の承認を行うことにより、都度リセットされます。
具体的には「一部債権の支払い」や「債権残高の承認」がこれに該当し、鉄道に即していえば「カード残高の一部を使用して電車に乗ること」や「カード残高(=債権残高)を鉄道会社に回答してもらう」ことだと思われます。だとすれば、券売機にカードを入れて残高を表示するという行為で時効がリセットする、と主張できるわけです。

最近のICカードならともかく、昔の磁気カードでは「このカードを最後に残高確認したのはいつか」ということまでは記録を取っていないと思われます。
また、鉄道会社のプリペイドカードは通常「有効期限なし」という約束で販売しており、未だ現役のカードを長年使用せず放置していたからといって「時効です」と主張する鉄道会社はないでしょう。

以上より、カードを乗車券購入などに使用できる時点から時効のカウントがスタートしていた、と主張する鉄道会社はなかろうと思います。
逆に言えば、カードを使用できなくなった日(券売機等で容易に債務の承認を行えなくなった日)から時効がスタートする、という主張が最も鉄道会社に有利で、それゆえ一般的なのではないかと推測します。

パスネットより古いカードが出てきちゃった!

非常に長くなりましたが、要するに、資金決済法による払い戻し期限は絶対ではない、しかし期限を過ぎてから払い戻しを受けるのは茨の道である、ということです。
だから、パスネット対応のカードを持っている人は今すぐ払い戻しに行きましょう!と、こうなります。

が! 家の不用品を整理していたオットーは、パスネット登場前に販売されていた私鉄系のプリペイドカードを大量に発掘してしまいました。自動改札機に直接投入できないタイプのやつです。
以前よく利用していた鉄道会社のカードなのですが、調べてみると4年ほど前に使用できなくなっていました。そして、資金決済法に基づく払い戻しの期間もとっくに過ぎていたのです。

個別交渉で払い戻しを申し込む

前述のとおり、鉄道のプリペイドカードの時効は1年か5年か不明なのですが、かりに5年だとするとギリギリ間に合います。

そこで、当該鉄道会社に電話をかけ、払い戻しができるか聞いてみました。

予想どおり「すでに払い戻しは終了しています」との回答でしたが、「債権は消滅していないと思うのですが」と食い下がったところ、「駅の掲示物を見ていなかったのか?」などいくつか質問され(実際、当該路線を使わない生活になったので掲示は見ていません)、「今回に限り」払い戻してもらえることになりました。時効5年を考慮した回答なのかどうかは不明です。

数日後に払い戻しの申込用紙が送られてきました。未使用のカードを添えてこの用紙を返送すると、銀行にカード残額が振り込まれるとのことです。

こんなに簡単にいくとは限らない

この一件だけ見ると「なんだ、楽勝じゃん」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、他社でも同じようにいくとは限りません。むしろ、うまくいかないことのほうが多いでしょう。

最大の問題は時効です。鉄道会社に「時効1年」を主張された場合、これを覆すにはそれこそ裁判でも起こさないと難しいでしょう。

そうでなくても、担当者が資金決済法の意義を理解していなければ、話は長くなります。
助けになりそうな資料として、消費者庁が出している文書をご紹介します。払戻期間が過ぎても「発行者に対して債務の弁済を請求することは可能」「当事者間で個別に交渉を行うことになる」とあります。
「消費者庁」と聞けば担当者も多少ドキッとするでしょうが、それで事がうまくいくかどうかは分かりません。

お手持ちの商品券の御確認を!(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110401adjustments_1.pdf

実際、オットーは数千円分の「バス共通カード」も死蔵しているのですが、使用停止から5年が経過しており、時効を理由に払い戻しを拒まれる可能性が高いため、今のところアクションを起こしていません。

終わりに

パスネット対応カードの払い戻し期限が迫っており、期限を過ぎると払い戻しがかなり困難になるということをご紹介しました。

この記事を読まれた方は、間違いなく期限までに手続きされるよう、おすすめします。「権利があること」と「実際に権利を行使できること」は別です。

蛇足(個人的感想)

以下、オットーの個人的感想ですので、聞き流していただいて結構なのですが…

資金決済法は、商品券の発行元が破綻した場合の消費者保護などを想定して制定されたと理解しているのですが、こと「使用停止後の払い戻し」に関しては発行元に寛容で、格好の逃げ道を与えているように思います。

そもそも、交通系のプリペイドカードは、そのほとんどが「有効期限はありません(ので、事前にお金を払ってください)」という触れ込みで販売されてきました。
会社によってはカードの図柄も凝っていて、「有効期限がなくて、どうせ後で必ず使うものだから、気に入った図柄のものがあればとりあえず今日買ってくださいよ」という売り方をしていました。

だからこそ、オットーはわりと積極的にカードを買ってきたわけです。
実家近くの鉄道で利用できる磁気プリペイドカードも、「何年かのうちに帰省すれば使うだろう」と、気に入った図柄のものがあれば迷わず購入していました。

それが、使用停止となった途端に「1年以内に払い戻さないと無効」などと言い出します。それはどうなの?と言いたいわけです。
別に、本社にカードを郵送するなど、手順は面倒でも構わないのです。「有効期限なし」と言って売ったカードについては、期限なく責任を取るのが本来の姿なのではないか、と思います。

とはいえ、50年ぐらいして、磁気カードを読み取れなくなってから「金返せ」と言われても会社も困るでしょうから、ある程度の期限は切らざるを得ない、というのは理解できます。
が、その期限が2年、3年というのはいかにも短い気がします。少なくとも5年、心情的には10年は待ってほしいと思います。それが「無期限」を謳ってカードを売った責任ではないのかと。

ちなみにSuicaは、最初から「10年間、一度も利用しない場合にはカードが使えなくなります」と最初から宣言しています。10年という期間にしろ、最初から宣言するというやり方にしろ、これが本来の姿だろうと思います。

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