東京23区のタクシーを常用している「自称・タクシー評論家」の私たちが、旅先で体験したタクシー事情を語る記事、第3弾は宮城県仙台市です。
地元の方からすれば「そんなの当たり前じゃん」ということばかりなのでしょうが、東京在住の方には、多少は参考になるのではないかと思います。
第2弾の塩竃市と同日のため、乗車回数は塩竃市との通算で表記しています。
よろしければ第2弾もご覧ください。
3乗車目:中野栄駅→仙台駅西口
仙台うみの杜水族館に3時間ほど滞在し、大人はすっかり疲労したところで仙台駅前のホテルに戻ります。
水族館から中野栄駅までは無料のシャトルバスが出ています。
建物の外に出たところ、たまたまこのバスが発車間際で、私たちが乗り込んでちょうど満席になりました。60人ほど乗れる大型バスです。
クルマ社会とはいえ、電車とバスで訪れる人も結構いるんですね。
なお、水族館には一応タクシープールもありましたが、車が常時待機しているわけではなさそうです。
仙台市は迎車無料ですから、電話で呼んでからタクシープールに向かうのが無難です。
10分ほどで中野栄駅に着くと、ホームからは「上り電車がまいります」の放送。
子連れではさすがに間に合いません。
次の電車は何分後かと調べると、実に20分後。
電車の時刻に合わせたバス運行をお願いしたいところですが、日によっては、そんな配慮が無意味になるような渋滞があるのかもしれません。
駅前のファミリーマートで買い物をしましたが、さすがに時間を持て余します。
駅前で空車が待っていたこともあり、またもタクシーに乗ってしまいます。
燃費の悪いプリウス?
車種はプリウスで、運転手さんのいでたちもクールビズと呼べそうなもの。
今日乗った中では一番まともな感じです。
塩竃市から仙台市に入ったことも影響しているのでしょうか。
先ほどの一件があったのでGoogleマップを注視していましたが、中野栄から仙台までは経路に選択の余地があまりなく、主要道をひたすら進みます。
渋滞もなく、片側2車線の走りやすい道をスムーズに走れるのは羨ましい限りです。
我が家から大学病院までタクシーに乗ると、60km/hを出せるような主要道はあまりなく、信号待ちと渋滞で1000円ぐらい料金が上がるというのが常ですから。
ただ、走りやすい道が多いせいか、MT車に慣れているせいか、アクセルの踏み方が実に荒っぽいのです。
ベタ踏みしたと思ったら離し、しばらく流してからまたベタ踏み、といった具合。
この手の運転をする人は東京にもいますが、なかなかのレベルです。
プリウスの省エネ性能を帳消しにしている気もします。
仙台駅を目前にして、抜け道的な道路でショートカットし(Googleマップの指示通り!)、いよいよ最終コーナーに差し掛かったところで、事件は起きました。
東口から西口へ、JRの線路を跨ぐ、気持ちのいい直線の陸橋。
前方が空いていると見るや、運転手さんは一気にアクセル全開。
思わず速度計に目をやると――95km/h!
タクシー会社の設置した機械なのでしょうか、「安全運転でお願いします」という合成音声が流れました。
後部座席にいたムスコーも、小声で「95キロも出た!!」と興奮気味でした。
その後、片側2車線の道路で大胆にUターンし、ホテルのエントランス前につけてくれるというサービスはあったものの、あの「急加速95km/h」の印象ばかりが残る乗車となりました。
まあ、気持ちは分かりますけどね。
陸橋部分に入るとなぜかスピードを出したくなる、あの感覚。
それを営業中にやるかどうか、です。
4乗車目:仙台駅西口→イオンタウン泉大沢
1時間ほどホテルの部屋で休んでから、4乗車目。
イオンタウン泉大沢というショッピングセンターに向かいます。
おりしもこの日は仙台市泉区で花火大会(泉区民ふるさとまつり)がありました。
このショッピングセンターの立体駐車場が花火観覧の穴場だという話をネット上で見つけ、タクシーで乗り付けることにしたものです。
そのカーナビ、何のため?
前述のとおり、仙台市のタクシーは迎車料金無料なのですが、見たところ空車が豊富に走っているので、とりあえずホテルを出て道端で待ちます。
思ったより苦戦したものの、2、3分待ったところで空車がやってきました。
車種はクラウンコンフォートだったか。
若干古めではありましたが、車両としては文句なしです。
運転しているのは60代と思われる男性。
ハンチングをかぶり、一癖ありそうな外見です(失礼)。
乗ったのは法人タクシーですが、個人タクシーのような雰囲気です。
助手席に乗り込むと、計器類の上に外付けのカーナビが取り付けられています。
が、思いっきりワンセグ放送が映っています。音声もガンガン車内に流れています。
私たちが乗り込んだので、音声は消したのですが、画面はテレビ放送のまま。
テレビ見ながら運転してたんかい!
行き先を告げると、たまたま営業所の近くだということで話は早く、想定どおりの道を走り始めました。
これから花火大会があるので、普段と違った大渋滞があるのではと警戒し、オットーはGoogleマップの道路状況を凝視していました。
すると、それに気付いた運転手さん、私のタブレット端末を見て
「それカーナビですか? いくらぐらいですか? 電話代は?」
と質問攻めです。
8インチタブレットという、世間的にはややマイナーな端末だったので、「何か見慣れないものを持っているぞ?」と目を引いたのかもしれません。
その後も、ちょっと渋滞するたび
「ナビではどうなってますか?」
と質問してきます。
いや、備え付けのカーナビ使いましょうよ! テレビじゃないんだから!
その後、下調べの段階で得た地元ネタをちょいちょい挟んで、「このへんの地理には詳しい」アピールをしておきました。
街は花火一色
Googleマップで見たとおり、花火会場のある七北田公園の周辺は渋滞となっていました。
といってもマップ上に「通常+10分」との表示が出ていたので、そこまで深刻ではないと分かります。
経験上、Googleマップの道路状況はかなり正確です。
Yahoo!カーナビがずいぶん楽観的な所要時間を提示してくるのとは対照的に、かなり現実的(時に悲観的と思えるほど)な所要時間を出してきます
八乙女駅のところで道が二手に分かれます。
地図を見る限り、ここを右に折れて国道4号へ向かうという選択もありそうなのですが、運転手さんは迷わず直進。
「混んでるけど、この道しかないからねー」
と言うので、先ほどの交差点を右に曲がったらどうなのか?と聞いてみたところ、普段から混んでいるので避けたい道とのこと。
どうりで、この混雑でもGoogleマップで提案されないわけです。地元タクシー運転手の感性を備えたGoogleマップ、恐るべし。
渋滞なので、道端の光景をつぶさに観察していたのですが、花火会場の対岸にあるケーブルテレビの営業所前に移動販売車が何台か集結していたのが目に留まりました。
会場である公園までは1km以上ある場所で、こんな手前で食べ物を買ってどうするんだろう?と不思議に思ったのですが、その謎は帰りに解けるのでした。
さらに進んで七北田川を渡ると、左手に大きなスタジアムが見えてきます。
が、スタジアムを開放して花火見物に供するという配慮はないようです。
泉区民ふるさとまつりは、花火大会だけでなく各種イベントがあり、観客をスタジアムに収容してしまうと他のイベントが寂しくなるという判断なのでしょうか。
儲けるためのイベントでないとはいえ、花火を見たい人からすると、実にもったいないと思います。
問題の渋滞は、泉中央駅前の商業施設駐車場が原因であり、駅前を過ぎると渋滞はすっかり解消しました。
「有事対策用」という物騒な看板のついた信号を過ぎ、将監トンネルで一気に国道4号まで北上します。
近くに自衛隊の施設でもあるのかと思いましたが、帰ってから調べたところ、ここでいう「有事」とは「災害」のことだそうです。
トンネル火災時などには赤信号になり、新たな車の進入を許さない、ということでしょうか。
ここから先は、営業所に近いと言っていたわりに運転手さんの記憶があやふやで、オットーがGoogleマップを見ながら道案内することになりました。
まあ、わざわざタクシーでイオンへ行くという人も多くないでしょうが…。
日がとっぷり暮れたころ、目的地に無事到着。最後までカーナビにはワンセグが映ったままでした。
私たちが降りたところで、すかさず音量を上げたのでしょうかね。
5乗車目:イオンタウン泉大沢→仙台駅西口
そして5乗車目。先ほどと逆向きの移動になります。
花火大会が終わったころにタクシーを予約してあったのですが、花火が始まったころに小雨が降ってきたのと、思ったより花火の見え方が悪いというので、開始10分で早々に退散し、タクシー会社に即時配車を要請しました。
ちなみにこの会社、ウェブ上から予約の申し込みができ、迎車はフリーダイヤルで可能です。
アプリからの迎車や予約はできませんが、少なくとも仙台ではかなり便利な部類に入ると思います。
地理的に、実際に利用できる方は稀だと思いますが、感謝の意も込めて勝手に紹介させていただきます。
泉タクシー(仙台市泉区)
http://www.izumitaxi.com/
やればできる!仙台のタクシー
10分ほどでタクシーが到着。
急いで乗ったのでよく見ませんでしたが、法人タクシー用としては見慣れない車種でした。
ともかく、そこそこ新しめで快適です。
運転手さんは白いワイシャツを着ており、応対も丁寧。
ネタ的には面白くありませんが、東京23区を走っていても違和感のないタクシーでした。
いちおうGoogleマップは見ていましたが、仙台駅へ戻るだけなので、当然ながら道案内は不要です。
花火会場のすぐ脇をかすめるため、徐々に花火が大きく見えてきました。
タクシー車内から花火を見るというのも、なかなか稀有で贅沢な体験です。
泉中央駅前の歩道橋は、花火を見る人でいっぱいでした。
場所によってはビルの陰になってしまいそうですが、場所を選べばよく見えそうです。
七北田川を渡り、先ほど見たケーブルテレビの営業所前を通過すると、そこには花火を見物する人々の姿が。
なるほど! ケーブルテレビの会社が、駐車場を花火見物に開放しているのでした。
帰宅してから調べたところ、名目は「ケーブルテレビ会社の夏祭り」ということになっていましたが、来客の主な目的が花火見物であることは明白です。
やられました。ネット上に情報はあったのに、探しきれませんでした。
会場周辺の渋滞をひそかに期待したのですが、車の流れは終始順調で、ほどなく仙台の都心部へ戻ってきました。
降りたあと、ツマーは「何であんなにエンジンふかすのかね」と言っていましたが、オットーは気になりませんでした。
確かに、東京で乗り慣れているタクシーよりは力強い加速があったかもしれませんが、それが不自然でない、走りやすい道でした。
「事件」のないまま、約30分でホテル前に戻ってきました。
私たちはタクシーを降りる際、よほどひどい場合を除いては、全員「ありがとうございました」と言ってから降りるようにしています。
しかし、それでは足りないと思い、降り際に「よいタクシーでした」と言ってしまいました。変な日本語ですが、偽らざる感想です。
まとめ:努力は報われる(多分)
仙台近辺で1日に5乗車もしたわけですが、「乗りたいときにタクシーが来ない」という経験は一度もありませんでした。
データを見たわけではありませんし、晴れた休日ということで需要自体がそれほどなかっただけかもしれませんが、仙台近辺のタクシーは十分な台数が稼働しており、むしろ過当競争なのではないかと感じました。
この推測が正しければ、仙台という土地は、タクシー会社やドライバーにとって苦しい環境であるといえます。
また、東京23区でいう大手4社のような存在の会社はなく、規模の小さい会社が林立している印象でした。
小規模の会社では、接遇のマニュアルを定めたり、研修を受けさせたりという体制が十分でない可能性があります。
会社から十分な指導がなく、待遇面でもモチベーションが上がらない、結果としてツッコミどころが多くなる――かなり乱暴ですが、仙台近辺のタクシーを利用してみて、現状をこのように分析しました。
そんな中、頑張っているタクシー会社(あるいは運転手個人)を最後の最後に発見することができました。
接客をちゃんとしたから、あるいは運転を丁寧にしたから、他のタクシーよりも繁盛する。
世の中そんなに甘くないのかもしれません。
しかし、一利用者としてはそうあってほしいし、利用者の評価を励みに、各タクシー会社(運転手)がレベルアップしてほしいと思います。
インターネットを介して、様々な口コミがやり取りされる時代になっています。
消費者にとって選択肢があるとき、そうした口コミが判断材料になる場合が増えていくと予想します。
仙台は小さなタクシー会社がたくさんあるようですが、裏を返せば、利用者が多くの選択肢の中から好きな会社を選べるということでもあります。
会社の視点から見れば、多数の中から選ばれるための努力が重要であるといえます。
運転技術を磨く、あるいは接遇サービスを高める。
遠回りに見えるかもしれませんが、長い目で見れば、こうした努力はその会社(運転手)に返ってくるのではないでしょうか。
次に仙台のタクシーに乗るのが何年後か分かりませんが、「何だ、仙台と比べると東京のタクシーはダメだな!」と言わしめるような変化を期待します。
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