キヤノンのスモールオフィス向け複合機「MF644Cdw」を所有しています。
価格、性能には満足しているのですが、1点、困ったことがあります。
普段は液晶パネルが消灯し、印刷ジョブやFAXが来るのを待機している「スリープ状態」なのですが、突然、何かを印刷するかのような動作が始まるのです。
しかし、実際には紙は出てきません。動作自体も数十秒で終わり、また何事もなかったかのようにスリープ状態に戻ります。
このようなことが1日に数回起き、近くに座っていると毎回ビックリします。
この状況を改善できないか?とユーザサポートに相談したところ、直接の回答は得られませんでしたがヒントを得ることはでき、ついに原因が分かりました。
結論から先に書くと「USBメモリを挿しっぱなしにしていたこと」が原因でした。
数ヶ月にわたる観察の結果を以下にまとめました。
同機種をお持ちの方の参考になればと思います。
こんな症状です
設置環境
我が家では、キヤノンの複合機「MF644Cdw」を以下のような環境で運用しています。
- 主電源:常にON
- コンピュータとの接続:有線LAN(接続先のルータには最大でPC×2台、Android端末×2台、ゲーム機×1台が接続)
- 電話線との接続:あり(光回線のホームゲートウェイ~MF644Cdw~他社コードレス電話機)
- スキャナ機能:使用(主にUSBメモリへ保存するため、USBメモリは常に挿入)
- Googleクラウドプリントの利用:あり
また、本記事執筆時(2020年4月)に確認しましたが、ファームウェアは最新版でした。
症状
普段、MF644Cdwの主電源はONにしてあります。
一方、操作部の液晶パネルは消灯し、パネル左下のスリープボタン(月のマーク)が緑に点灯している状態です。
この状態で、接続しているコンピュータから何ら印刷指示を発しないにも関わらず、プリンタ部が突如として動作を開始します。
用紙をトレイから引き出すようなガチャガチャという音が数十秒間続きます。
この間、液晶パネルは消灯のまま、スリープボタンも緑点灯のままですが、「データイン」のランプは点滅しています。
おっと、何か印刷されるのか?と身構えていると、最終的には何も印刷されずに動きが止まり、30秒ほどするとカチッという音(大電流をオンオフするためのリレー?)がして、また元の静かな状態に戻ります。
トナーを消費している!
この症状、「急に大きな音がしてドキッとする」というだけなら、個人的には我慢できます。
(寝室に設置している方は我慢できないでしょうが…)
しかしもう一つ問題があり、上記の謎の動作では、トナーを消費しているようなのです。
2020年2月、購入後半年ほどで初回のトナーが各色とも順次底をついてきていました。
各色「そろそろトナーが切れます」判定となっていたのですが、例の謎動作が発動し、終了した直後に「ついにトナーが切れました」というエラーを発する、ということが複数回あったのです。
つまり、謎の動作で残り少ないトナーを使い切ってしまった、ということです。
自分が想像していたより随分早くトナーが切れたこともあり、不信感が一気に高まり、キヤノンのサポートに連絡を入れたのでした。
原因究明
キヤノンのサポートに症状を連絡したところ、すぐに回答が来ました。
謎の動作は「画質調整」だった
まず分かったこととして、謎の動作の正体は「画質調整」なのだそうです。
たまたま液晶画面がONの時にこの謎の動作が発生すると、画面下部に「補正実行中です。しばらくお待ちください。」と表示されます。
色味の補正なのか、多色刷りのズレを防止するための位置補正なのか、はたまたトナーのムラをなくす処理なのか。詳細は分かりません。
ともかく、一定の枚数あるいは時間が経過するごとに、この「画質調整」が実施されます。
通常、スリープ状態では画質調整は発動しません。
しかし、我が家では何らかの理由でスリープ状態に入っておらず、一定時間の経過により、画質調整が発動しているようです
そしてサポート曰く、「画質調整」を止める手段はない、とのことです。ガーン。
「月マーク」でもスリープ状態とは限らない!
次にサポートからの回答で分かったのは、「月マーク点灯+液晶画面消灯」でも、スリープ状態に入っているとは限らない、ということです。
えっ!と思ったのですが、言われてみればその通りで、たとえばスリープ状態から印刷を行った際、月マーク点灯+液晶画面消灯のままデータインランプが点滅し、印刷物が出てきます。
サポート曰く、以下の要因によりスリープ状態に入れていないことが考えられる、とのこと。
以下の項目は、よく読むと取扱説明書にも書いてあります。
- 本機で何らかの操作をしている
- データランプが点灯または点滅している
- 調整中やクリーニング中など、本機が動作中
- 紙づまりが発生している
- 外付け電話機、またはオプションのハンドセットの受話器が外れている
- ファクスの着信時に呼び出し音を鳴らさない設定にしている
- メニュー画面が表示されている
- USBメモリーまたはパソコンへの読み込み待機中
- エラーメッセージが表示されている(例外あり)
- 本機がLDAPサーバーなどと通信中
- ダイレクト接続のSSID/ネットワークキー表示画面が表示されている
- 設定のインポート/エクスポート中
「そりゃ当たり前だろ」というものもありますが、逆に「えっ」というものもあります。
「ファクスの着信時に呼び出し音を鳴らさない設定にしている」はその典型です。
おそらくこの設定にしても見た目は「月マーク点灯、画面消灯」で、スリープ状態に見えると思います。しかし実際にはスリープ状態に入れないのだそうです。
普通、呼び出し音の設定でスリープ状態が左右されるとは思いませんよね。
ちなみに我が家の場合「呼び出し音を1回鳴らす」という設定になっていたので、これには該当しません。しかし念のため、「呼び出し音を2回鳴らす」に変更しておきました。
また「外付け電話機の受話器が外れている」というのはちょっとした盲点です。
電話をかけようと受話器を上げた途端、スリープ状態が解除され、「データイン」ランプが点滅し、スキャナ部が1~2秒動作します。
なお、電話の着信だけでは解除されません。かかってきた電話に出るために受話器を上げたときにスリープ状態が解除されます。
我が家では固定電話はほとんど使いませんが、固定電話をよく使う方は、電話をかけるたびに結構な音がするので驚かれるかもしれません。
犯人は「USB」か「クラウドプリント」か
さて、上記の「スリープ状態に入れない原因」を眺めて、自分に該当しそうだと思ったのは以下の2点です。
- USBメモリを挿しっぱなしにしている
- Googleクラウドプリントを利用している
USBメモリについては、スキャナで取り込んだ画像を保存するため、普段からMF644Cdwに挿しっぱなしにしているものです。
前述のリストに「USBメモリーまたはパソコンへの読み込み待機中」にはスリープへ移行できないとあるため、怪しいと考えました。
またGoogleクラウドプリントは、出先からでも自宅のプリンタに出力できるという便利な機能ですが、本機能をオンにすると、MF644Cdwとしては定期的にサーバへ接続しにいく必要があります。
逆にクラウド側からMF644Cdwに対しても、pingのような通信が定期的に来ている可能性があります。
前述のリストでいうと「本機がLDAPサーバーなどと通信中」というのに該当し…ないとは思うのですが、最後に「など」と書いてありますし、外部との定期的な通信が原因でスリープ状態に入れない可能性は否定できません。
ということで、USBメモリを抜き、かつ、Googleクラウドプリントを使用しない状態にして様子を見ることにしました。
画質調整の挙動が変わった!
画質調整は何の前触れもなく、1日数回発動するので、上記対策に効果があるのかどうか、即座には分かりません。
日がな一日見張っているわけではありませんので…。
ところが、意外にもすぐに対策の効果を目の当たりにしました。
対策を実施した翌日の夜、コピーをとるためにスリープ状態を解除しました。
すると、1枚目のコピーが終わった後、2枚目の原稿をセットしている間に画質調整が発動したのです!
何の前触れもなく発動する画質調整が、このタイミングでたまたま発動した、という可能性もゼロではありません。
しかし、自然に考えれば以下のような推測となります。
- 前回の画質調整から一定の時間(and/or 印刷枚数)が経過した
- しかしスリープ状態のため画質調整を開始できず、タイミングを伺っていた
- するとコピーのためにスリープ状態が解除されたので、1枚目のコピーが終わって暇になったところで、待機していた画質調整が即座に始まった
その後も、コピーのためにスリープ状態を解除したり、プリンタで何かを印刷したりすると、初回のジョブの終了直後に画質調整が始まる、ということが連続しました。
そのため上記の推測は正しく、したがって対策の有効性を確認できたと考えています。
Googleクラウドプリントは無実
とすると、犯人はUSBメモリかGoogleクラウドプリントのどちらかということになりますが、結論からいえばUSBメモリが原因でした。
USBメモリを挿さない状態でGoogleクラウドプリントを再設定しましたが、相変わらず、印刷やコピーの直後に画質調整が発動するという挙動が連続しました。
裏を返せば、Googleクラウドプリントを設定しても、スリープ状態には入れていたということです。
このことから、「USBメモリを挿したまま放置する」というのが、サポートの回答や取扱説明書でいうところの「USBメモリーまたはパソコンへの読み込み待機中」に該当し、したがってスリープ状態に入れていなかった、という結論になります。
画質調整、多すぎませんか?
問題はこれで解決したのですが、今度は別のことが気になってきました。
そもそも、画質調整の頻度が高すぎないか?と思うのです。
我が家では毎朝、子供の勉強に使う教材を20枚程度コピーないし印刷するのですが、ほぼ例外なく、1枚目のコピーが終わると画質調整が発動します。
つまり、1日に1回以上の画質調整が必要であると、プリンタ側が判断しているわけです。
インクジェット方式のように詰まりが発生するわけでもないのに、こんなに高頻度で画質調整を行う必要性が、よく分かりません。
トナーが減ると画質調整が増える?
この問題に注目し始めてから、1回の画質調整にかかる時間がだんだん延びてきたように感じます。
最初にこの問題に気付いたときには、1回の画質調整はせいぜい30秒程度だったように思います(測定はしておらず、あくまで私の感覚です)。
しかしその後、時間を計ってみたら、1回の画質調整に約115秒かかっていました。
コピーしようとしたら2分近く待たされるわけで、さすがにイラッとします。
画質調整の所要時間が延びているとすると、原因としてはトナーの残量が考えられます。
2分近いタイムを叩き出した当時、トナーは4色とも「要交換」の状態であり、「自己責任で印刷を継続する」というモードで使用していました。
では、トナーを交換すれば、タイムは短くなるでしょうか?
答えは「Yes」でした!
色の薄さに堪えかねて、黄色のトナーを新品に交換したところ、画質調整の所要時間は如実に短くなりました。
「超消耗状態」では所要時間が長くなる
結局、4色ともトナーを交換し終わったので、「トナーの消耗と画質調整の所要時間」について、観察の結果をまとめます。
トナーの残量が十分ある時点では、1回の画質調整に要する時間は標準で約40秒です(まれに、これより長くかかる場合があります)。
トナーの残量が減り、「そろそろ交換」を経て「要交換」となっても、即座に画質調整の所要時間が延びるわけではないようです。
「要交換」と言われているトナーを使い続けていると、そのうち、印字に明らかなムラ、かすれが見られるようになってきます(以下、この状態を「超消耗状態」と称します)。
この超消耗状態に至ると、画質調整の所要時間が大幅に伸びるようです。
4色のうち1色でも超消耗状態のトナーがあると、1回の画質調整に2分近くかかるようです。
1色を新品に交換しても、別の色が超消耗状態であれば、画質調整に時間を要するという症状は改善されません。
トナーの残量が画質調整の所要時間に影響するということは、画質調整作業では、印字ムラの有無のようなことをチェックしているのかもしれません。
「トナーが不十分になる→満足のいく状態になりにくい→時間がかかる」のような仕組みなのでしょうかね。
なお、画質調整の頻度自体については、トナーを全交換しても減った実感がありません。
USBメモリを挿しっぱなしの状態で、1日20枚程度の印刷を行うと、1日に2~3回は画質調整が発動しています。
あえて、USBメモリを挿しっぱなしにするという選択
そもそも、この記事を書き始めた理由は「突然、画質調整が始まるのは困る」「できるだけ画質調整の頻度を減らしたい」という思いからでした。
しかし、いざ問題が解決すると、今度は「画質調整は時間がかかるから、スリープ状態のときに済ませておいてもらいたい」と思うようになってきました。
何せ、朝の忙しい時間帯、コピーをしようとすると毎回のように1分以上待たされるのです。
暇なときに画質調整をやっといてくれよ!と思いたくなります。
暇なときに画質調整をやらせたい
すでに書いたとおり、USBメモリを挿しっぱなしにするか否かで、画質調整の発動タイミングは以下のように変わってきます。
- USBメモリを挿入している→画質調整は、必要が生じると直ちに発動
- USBメモリを挿入していない→画質調整は、スリープ状態から復帰した際に(必要が生じていれば)発動
USBメモリを挿入していない場合、「複合機で何か印刷したい」と思ったときに限って、画質調整が行われるわけです。
言ってみれば、一日中遊んでいる息子に「買い物行ってきて」と命令すると、毎度のように「トイレ行きたい」と言い出し、いつも出発が数分遅れるようなものです。
「我慢できるなら、トイレの回数が少ないほうが水道代が安くついてよい」と考えるか、「買い物を命令するたびにトイレへ行くのではじれったいから、遊んでいる途中でも、尿意を催したら随時トイレへ行ってほしい」と考えるか。
よく分からないたとえ話になってきましたが、後者、すなわち「画質調整の必要が生じたら、その時に済ませておいてもらいたい」と望む方は、USBメモリを挿しっぱなしにすればよい、ということですね。
ただ、USBメモリを挿しっぱなしだと、スリープ状態に入ったようで入っていないので、待機電力は若干増えるかもしれません。
また、USBメモリを挿しっぱなしだと画質調整が随時行われるので、トータルの画質調整回数は増えます。画質調整時にはトナーを(おそらく微量ですが)消費するようなので、トナーの寿命が多少短くなる懸念があります。
まとめ:画質調整がもう少し低頻度なら…
以上、キヤノンの複合機、MF644Cdwの謎の動作「画質調整」について見てきました。
冒頭にも書きましたが、価格に対して機能は十分すぎるほどで、カラーレーザー複合機が欲しい方には間違いなくお勧めできます。
それだけに、1日20枚程度の印刷に対し、(スリープ状態に入らなければ)1日数回の画質調整が発動するという仕様は、これを理由に購入を断念するほどの問題ではありませんが、ちょっと残念です。
ファームウェアをアップデートして改善する類の問題ではないと思われるので、すでに本機種をお持ちの方は、この記事を参考に、うまく画質調整と付き合っていただければと思います。
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