オットーは結婚するまで、自分の意志でタクシーに乗るということはほぼ皆無でした。今では自称「タクシー利用者のプロ」ですが、乗り慣れていないころの気持ちもまだ覚えています。
タクシーに乗り慣れていないと、「そもそも行き先をどう伝えればいいんだろう?」というところから不安になるものです。逆に運転手さんに道を聞かれても、普段タクシーに乗らなければ答えられませんし…。また、運が悪いと遠回りのルートを選択されることもあるでしょう。
本記事では、東京23区のタクシーを利用する場合に「行き先をどう伝えれば失敗しないか」という点に絞ってご紹介したいと思います。
なぜ東京23区に限定?
タイトルを見て「タクシーの乗り方なんて全国どこでも一緒じゃないの?」と思われた方。確かにそうなのですが、東京23区のタクシーには独特の事情があるのです。
事情1:守備範囲が広大
東京23区で営業しているタクシーは「東京都特別区・武三交通圏」というエリアに属する車両です。多少の不正確を承知で、あえて簡単にいえば、「東京23区+武蔵野市+三鷹市」の営業所に所属する車両ならば東京23区で営業できるということです。
この営業区域は相当な広さです。面積だけならそうでもないのかもしれませんが、エリア内の人口、道路や建物の密集度合いは間違いなく日本一でしょう。
この広大なエリアの隅々まで知り尽くした運転手さんがいるか?というと、そんな人はいません。それぞれの運転手さんは得意な地域、苦手な地域というのを持っているはずです。
オットーは子供のころ、田舎町でよくタクシーに乗せてもらっていました。隣の家にちょっとした有名人が住んでおり、「○○町、××さん宅の1軒隣」という指示で大抵のタクシーは迷わず走ってくれました。経由する道も間違いなく裏道で、メインの国道は通りません。
一方、東京でタクシーに乗ると、運転手さんが道やランドマークを知らないということが日常茶飯事です。
もちろん、社員の入れ替わりが激しく、「初心者」が多いという事情もあるでしょうが、そもそもエリアが広いのです。道や建物をすべて知っておけ、というのは無理な話です。
事情2:IT化が進んでいる
その代わり、東京23区のタクシーはIT化が進んでいます。カーナビ装備は当たり前で、アプリでタクシーを呼んだり、決済したりといったサービスが充実しています。
23区のタクシーに乗り慣れていると、今時タクシーにカーナビは当たり前じゃないの?と思っていたのですが、そうでもないようなのです。
2015年のある日、訳あって大船駅からタクシーで自宅まで戻ることになりました。
カーナビに自宅住所を入れてもらおうとしたら、そもそもカーナビがない! 大手私鉄系のタクシーで、Suicaなどの交通系電子マネーには対応しているのに、カーナビはないのでした。
乗客であるオットーが地図を見ながら道案内したので自宅には着いたのですが、運転手さんは「帰りの道が分からない」と言い出しました。これ、ネタじゃありませんよ!実話ですよ!
「そこのコンビニで地図を立ち読みしますよ」と言う運転手さんに、とりあえず最寄りのインターチェンジまでの道を教えて降車しましたが、ちゃんと帰れたのでしょうか。
初級編:住所を告げ、カーナビにセット
以上のような東京23区の特殊事情をふまえて、23区のタクシーを利用する際の「上手な行き先の伝え方」をご紹介します。
まず、最も確実なのが「住所を伝える」ことです。「○○ビル」「××病院」のような建物名は通じないと考えたほうが無難です。
東京タワーや東京駅など、全国的なランドマークならばともかく、そうでなければ、運転手さんが建物の場所を知らないことは日常茶飯事です。
「あの大学病院ぐらい分からないの?」と言いたくなることもありますが、23区内にいくつ大学病院があるか、と考えれば無理もありません。また、似たような名前のランドマークも多いので、勘違いされることもあります。
そんな中、確実なのは住所です。住所を聞いて即座に「あぁ、あそこですね」と分かる運転手さんは稀でしょうが、そこは23区、カーナビという文明の利器があります。住所が正確ならば、まず間違いなく目的地へ連れていってくれます。
ですからタクシーに乗る場合、不慣れであればあるほど、目的地の正確な住所を把握しておくべきです。
走り出す前に「カーナビに住所を入れてください」と言えば、運転手さんはまず間違いなく対応してくれます。
運転手さんにしても、前述のとおり得意なエリア、不得意なエリアがあり、「今度はどっち方面に走るんだろう、不得意エリアには行きたくないが…」という不安が常にあるはずです。その点、カーナビが使えれば道に迷うことはなく安心です。
タクシー会社によってはカーナビのデータが古く、新しくできた建物の住所は正確に入力できないことがあるようです。
それでも大まかな場所は分かりますので、明後日の方向へ走り出すといったことは避けられます。
中級編:アプリで目的地を指定してしまう
次に中級編。これは迎車する場合に限るのですが、タクシーをアプリで呼び、このときに目的地まで指定してしまうという方法があります。
私たちはもっぱら「GO」というアプリを利用しています。アプリの紹介は別の記事に譲りますが、ネット決済という後払いも使えて非常に便利です。
「GO」アプリでは、初回の登録時にクーポンコード「mf-nu4pkj」を入力していただくと2000円分のクーポンがもらえますので、目的地の指定も含め、ぜひお試しいただければと思います。
アプリで目的地を指定し、ネット決済で後払いにすれば、タクシーが来て乗り込むだけで、他に何もする必要はありません。子供一人で乗せても大丈夫なくらいです。
上級編:地図を見ながら誘導する
そして上級編です。自宅に向かう場合など、道路事情をよく知っていれば、大まかな行き先を伝えた上で逐一誘導したほうが、時間や料金を節約できる可能性が高まります。
全行程を完全に把握していればいいのですが、たとえば出先から自宅に向かう場合、出先周辺の道路事情はよく分からないと思います。そんなときには予習が必要です。Googleマップ等で経路を下調べしておきます。
最短経路を探すならGoogleマップのPC版が便利
Googleマップにはスマホ用のアプリもありますが、下調べにはパソコンのブラウザ版がベストです。
というのは、Googleマップで出てくる経路は最短とは限らず、手動で経由地を加えるとより短い経路が出てくる場合が結構あるからです。経由地をいろいろ変えて試すのは、パソコンのブラウザを使わないとやりにくいと思います。
タクシーの料金は基本的に走行距離で決まります。ですから最短経路を把握しておくことが料金の節約には重要です。
時速10km以下のノロノロ運転では時間経過による料金の加算(時速10kmで走り続けたものとして料金を計算する)がありますので、最短経路が渋滞の名所であれば、多少の遠回りは価値があると思います。しかし単に「道が太いので走りやすい」「片側2車線でスピードが出る」といった理由で遠回りの主要道を選択するのは、料金的には得策といえません。
乗車中はスマホアプリを活用
下調べをした上でタクシーに乗車し、今度は地図アプリを見ながらタクシーを誘導していきます。
オットーがよく使うアプリは「Googleマップ」です。
Googleマップは、スマホを持って車に乗っている人の移動速度を密かに収集し、道路の混雑状況を地図上に表示するという機能を持っています。結構細い道でも渋滞の様子が分かるので重宝します。
以前は「Yahoo!カーナビ」も利用していました。こちらはVICS交通情報という、市販の(車に据え付ける)カーナビで使っているのと同じ渋滞情報を受信できます。
が、結局はビッグデータの勝利というか、Googleマップの「草の根渋滞情報」の方が概して有用なので、VICS交通情報をわざわざ受信する必要はないな、と今では思っています。
道順の伝え方はこんな感じ!
さて、肝心の「道順の伝え方」です。
たとえば私たちの場合、自宅から20kmほどの大学病院へよく行きます。行きはアプリで迎車するのでいいのですが、帰りは病院のタクシー乗り場で拾います。
このとき、オットーは「世田谷方面なんですけど、玉川通りから駒沢通りに入ってください」といった感じで、大まかな行き先と当面のルートを伝えます。あとは渋滞状況などを見ながら、極力最短経路で自宅へと誘導していきます。
主要な道路であれば通りの名前を伝えるだけでそちらへ進んでくれますが、進むにつれて地元の人しか知らないような道になってきます。
そんなときは「あそこの角を右へ」などと伝えることになるのですが、ここではタイミングがポイントです。直前すぎず、なおかつ注意力を維持し続けられるような時機を見計らって伝えるようにしています。距離にして曲がり角の150mくらい手前、時間にして10秒ちょっと前ぐらいでしょうか。
これは主に安全運転のためです。直前に「ここ曲がって!」と言われると、いくらプロの運転手さんでも焦りますよね。何度も同じ道を通っていると、慣れない運転手さんが戸惑うポイントも大体分かってくるので、そういう地点では多少手厚く案内したりもします。
オートマか、マニュアルか
以上、乗客の側が主導権を握ってルートを案内する場合のやり方をご紹介しました。
この方法、最初に正確な目的地を伝えていないので、到着まで誘導し続けなければならず、気を抜けません。タクシーの中で眠りたい、仕事をしたいといった方には向きません。そういう方はカーナビに目的地を入力してもらう、いわば「オートマ」な方法がよいでしょう。
が、カーナビ任せでちょっと遠回りになったとか、不安になった運転手さんが自分の知っている道を選んで非効率なルートになったとか、そうした損失を回避してとにかく低料金で移動したいなら、逐一道順を指定する「マニュアル」な方法がよいと思います。
逐一道順を指定するのは面倒なので、出発する時点で先々まで道順を指定したり、道順を紙に書いて渡したりということも何度か試したのですが、これが意外と運転手さんに伝わりません。
たとえば、自宅を出て「○○通りから××街道へ」という道順の場合、自宅から○○通りに出るのは自明だからと思って「××街道」だけ告げると、いきなり××街道のほうに走っていってしまう、ということが何度かありました。結果的にかなりの遠回りになったのですが、確かに「××街道へ行ってください」とは言ったので間違いではありません。
どうも、「複雑な道順を言葉で伝える」ということは意外と難しいようです。その場その場で指示をするのが最も簡単かつ確実だというのが、私たちの経験から得られた結論です。
応用編:営業所の所在地を見て接し方を変える
特に上級編のような誘導方法をとる場合に言えることですが、タクシーに乗る前に「このタクシーはどこの営業所の車か」ということをチェックするのは重要です。
冒頭に書いたとおり、東京23区のタクシーは営業区域が広大です。極端な話、足立区のタクシーが三鷹市で営業してもよいわけです。
足立区のタクシーが三鷹市で流しているということは稀でしょうが、たとえば三鷹市に帰りたい人が東京駅でタクシーを拾ったら足立区の車だった、ということは十分あり得る話です。
「乗る前に営業所って分かるの?」という方。大体は分かります。というのは、車体に「杉並」「北」「武蔵野」といった地名の表記があるからです。それぞれ「杉並区」「北区」「武蔵野市」に営業所があることを示します。
地元の車なら安心、そうでなければ寛容に
乗ったタクシーが「地元の車」なのかそうでないのか、それを頭に入れておけば、運転手さんとのコミュニケーションはより円滑になります。
極端な話、たまたま拾ったタクシーが自宅近くの営業所の車であれば、「○○3丁目のセブンイレブンまで」といった行き先の指示もできるわけです。
逆に、地元でない車に当たった場合、「何だよ、プロのくせに○○通りも知らないのかよ」などと内心毒づくこともなく、「まあ××区の車じゃしょうがないな」と冷静に対応することができます。
地元のプロに技を伝授してもらおう!
もしタクシーを選べる状況ならば、目的地付近に所属する車を選ぶのがよいでしょう。
ある程度道順をお任せにしても安心ですし、知らない抜け道を教えてもらえることもあります。「タクシー経験値」を上げられる貴重な機会です。
実際、オットーが持ちネタとして使っている抜け道のほとんどは、タクシー運転手さんに教えてもらったものです。
Googleマップなどで自力で調べた抜け道は、実際に走ってみると、交通規制や走りにくさなど思わぬ障害がありがちです。オットーはストリートビューなどで念入りに交通標識をチェックするようにしていますが、それでも実際に初めて走る際には「大丈夫だろうか」と不安になります。
その点、プロが実際に使っている抜け道であれば安心です。時間帯限定の交通規制もあるので、ストリートビュー等での「復習」は欠かせませんが、次回以降、したり顔で抜け道経由を指示することができるようになります。
まとめ:期待しすぎず、ITを活用しよう
以上、かつてのタクシー初心者がここ10年で体得した「技」をご紹介しました。
タクシー業界はいろいろな意味で厳しいようです。
この前、大手タクシー会社の営業所前を通りかかったところ、掲示してあった採用担当の電話番号がフリーダイヤルでした。迎車する際は電話料金がかかるのに、求人に応じる際は無料ですよ! そういう時代なのだなと思いました。
営業区域が広いという23区の特殊事情も考え合わせると、特に地理に関しては、運転手さんにあまり期待してはいけないのではないか、と思っています。
目的地のことは自分が一番よく知っている(少なくとも事前に下調べできる)のですから、自分が主導権を持ってリードしていく。そういう付き合い方がよいのではと思う次第です。
幸い、今は地図もスマホやPCで見放題ですし、カーナビ相当の機能も無料で使えます。会社によっては行き先を指定して迎車することまでできます。こうした技術をうまく利用して、タクシーを使いこなしていただければと思います。
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