クロス取引、売買を別会社にして手数料を節約できる? 我が家の例をご紹介

株主優待で年利3%

我が家で毎月のように実践している「クロス取引」。
この取引にかかる手数料は「現物株購入」「信用売建」「貸株料」の3つです。

これらのコストについて、手数料のおトクな証券会社を選べば、通常より多少節約できることがあります。

本記事を最初に公開したのは2018年2月なのですが、その後auカブコム証券の手数料体系が一新され、事情がだいぶ変わってきました。
2021年3月現在、我が家では、クロス取引で人気のauカブコム証券を軸に、1日50万円以下の取引手数料が無料という松井証券を組み合わせ、取引手数料を節約しています

両社ともかなり特殊な手数料体系ですので、他社ではあまり参考にならないかと思います。
あくまで「auカブコム証券と松井証券の組合せ」での話としてお読みください。

クロス取引の復習

「クロス取引」と聞いて「何だそれは?」と思った方は、以下のページをまずお読みください。

ほぼノーリスクで年3%の利益も。クロス取引って何だ?
先日、日本毛織(ニッケ)から500円のクオカードが届きました! 最近話題の株主優待です。 オットー、ツマー合わせて1000円の収入となりました。 ツマー やったー豪遊しようぜー オットー 1000円でかよ。それに入手コストもかかってるの! ...

ごく簡単に復習すると、「現物株を買う」と同時に「信用取引で同数の株を売る」ことにより、株価が変動しても損をしない(得もしない)状況を作り出すのがクロス取引です。

実質的に株価の変動はゼロになるので、売買手数料などのコスト分だけ、必ず損をします。
ただ、現物株を購入するので、権利確定日まで待てば株主優待を得られます(配当金は実質的にはもらえません)。
株主優待の価値が売買手数料などの取得コストを上回れば、トータルでは得になるというわけです。

クロス取引は証券会社を選ぶ…のは「売り」だけ

以前、別の記事でもご紹介しましたが、クロス取引は証券会社選びが最大のポイントといえます。
株の在庫は各証券会社でまちまちだからです。

信用取引とは?証券会社選びは? クロス取引への第一歩
何はともあれ、証券会社に口座を作らなければ株主優待生活は始まりません。 証券会社の口座ならもう持ってるよ!という方は多いと思います。 が、「一般信用でクロス取引」という手法を取る場合、証券会社選びが利益に直結してきます。 ひと月に何十銘柄も...

在庫のある証券会社でないとクロスできない

クロス取引で一番難しいのは、お目当ての銘柄を「一般信用売り」することです。

「一般信用売り」というのは、個々の証券会社が持っている株を借りてそれを売ることです。
つまり証券会社によって在庫があったりなかったりするわけで、どの証券会社を選ぶかというところが最重要になってきます。

そこで我が家では、基本中の基本、auカブコム証券を主に利用しています。
在庫している銘柄の多さ、在庫の豊富さは業界随一です。

現物株購入も同じ証券会社が便利、その理由は?

繰り返しにになりますが、クロス取引では「現物株の購入」のと「信用新規売り」を同時に行います。

通常、この2つの取引は同じ証券会社で行います
必須ではありませんが、それが一番面倒でなく、かつおトクな場合が多いからです。

「現物株の購入」と「信用新規売り」を別々の証券会社で行うと、権利落ち日に面倒が生じます。
最後の「品渡し」ができないのです。

復習:品渡しって何だっけ?

たとえば100株のクロス取引をしたとします。

100株を証券会社から借りたので、これを返済することで取引が終わります。
借りている間じゅう貸株料が発生するので、通常は権利落ち日(権利確定日の翌営業日)にすぐさま返済します。

売建玉の返済方法の一つとして、株の現物を証券会社に納めることで返済することができます。
これが「品渡し」です。

クロス取引の場合、現物株を100株買って、同時に100株を売り建てするので、売建玉と同数の現物株が必ずあるはずです。
ですから、売建玉の返済は必ず品渡しで済むはずです。

ただし、品渡しする場合、株の現物は「株を借りた証券会社」の口座になくてはなりません
他社の口座から直接返済することはできません。

売りと買いを別々の証券会社でやると、ここで面倒が起きるわけです。

品渡しできないとどうなる?

売建玉は、品渡しでなく、現金で返済することも可能です。
つまり現物株は普通に売却する一方、信用売の建玉は、現在の株価で株を買って返済するという方法です。

これなら現物株が別の証券会社にあっても可能ですが、タイミングに課題があります

「現物株の売り」と「売建玉の返済(買い)」を確実に同じ単価で行うためには、取引開始時点で成り行き注文を入れておかなければならないのです。

この点がよく分からない方は、以下の記事により詳しく説明がありますのでご一読ください。
クロス取引、資金不足時の裏技が! ただし落とし穴に注意
クロス取引で株主優待を入手している我が家。 3月や9月の優待ラッシュ月には手持ち資金を全部使っても希望銘柄を買い切れず、余力の限界ギリギリまで取引しています。 そのあたりの事情は以下の記事をご覧ください。 この銘柄をクロス取引したいのに、余...

これが品渡しならば、元々が「売建玉を現物株で相殺する」という取引ですから、原理的に売買の単価の差は発生しません。
品渡しは当日の取引時間前に注文することもできますし、取引時間中、いつ注文しても同じ結果となるので、忙しい人や、うっかり注文を忘れそうな人には便利です。

以上をまとめると、品渡しを利用すると取引終了時に便利であり、そのためには「現物株」と「信用売建玉」を同じ証券会社に置いておく必要がある、ということになります。

品渡しは手数料もお得

便利な品渡しですが、さらによいことには、品渡しは手数料無料としている証券会社が多いようです。

これはクロス取引のコストを下げるには実に都合のいいことです。
通常、売建玉を返済するにも、現物株を売却するにも取引手数料がかかるところ、両者を相殺する「品渡し」ならばタダで済むからです。

auカブコム証券は信用取引無料!

ところが!

2021年3月現在、auカブコム証券では、信用取引の「新規建玉」「返済」の手数料が無料となっています!

その代わり、今回問題にしている「品渡し」や、その逆の(現金を支払って買建玉を決済し、現物株を得る)「品受け」について、手数料がかかります。

これはなかなか珍しい手数料体系です。

一応、品渡しの方が有利

ただ、だからといって、auカブコム証券でクロス取引を手仕舞いする際に品渡しを使わない方が有利かというと、答えはNoです。

auカブコム証券でクロス取引を手仕舞いする際、「品渡し」と「通常の売買」で手数料を比較してみます。

まず品渡しの場合、手数料体系は以下のとおりです。

次に通常の売買、すなわち「現物株の売り」と「売建玉の返済」を行う場合、売建玉の返済は手数料無料で、現物株の売りの手数料は以下のとおりです。

見比べると分かりますが、常に現物株の売り手数料の方が高い(あるいは同額)です。

便利さを考えても、あえて品渡しを避ける理由はありません。

松井証券、1日50万以下なら手数料タダ!

さて、オットーが生まれて初めて口座を作った証券会社が松井証券です。
ネット証券全盛の今、決して目立つ存在ではありませんが、手数料体系には見るべきものがあります。

「ボックスレート」と称するもので、取引ごとに手数料を計算するのではなく、当日の取引額の合計で手数料が決まるというもの。

ここまでなら他社でもよくあるのですが、驚きなのは、取引額が1日50万円以下であれば手数料が0円ということです。
かつては「1日10万円以下」だったので小型株しか買えなかったのですが、これが50万円以下まで拡大されたことで、一気に使い勝手がよくなりました。

合わせ技で、手数料0円の優待取り!?

この2つの事実から、オットーはあることを思いつきました。

松井証券で現物株を買い、auカブコム証券で一般信用の売り建てを行えば、手数料ゼロでクロス取引ができるじゃないか!と。

もちろん松井証券で一般信用の売り建てを行ってもいいのですが、在庫の種類、量ではauカブコム証券に軍配が上がります。

厳密にいえば、取得コストはゼロではありません。
売建玉を保有している間は貸株料がかかります。
一般信用(長期)であれば売買代金の2.25%/年で、たとえば2000円×100株=20万円の売り建てを行うと、1日あたり約12円です。

ただ、クロス取引だと建玉の保有期間は最短2日ですから、通常これは高額にはなりません。
売買手数料ゼロの効果は相対的に大きいといえます。

このほかに、建玉の約定日から1ヶ月経過するごとに1株11銭の事務管理費が発生しますが、権利落ちの1ヶ月以上前にクロス取引を始めることはそれほど多くないと思います。

注意点もあります

手数料が節約できてよかったね!で記事を終わりたいところですが、デメリットにもふれておかねばなりません。

注意点1:品渡し不可→返済は「取引開始前に成り行き注文」

松井証券で現物株を買い、auカブコム証券で一般信用の売り建てを行った場合、取引を手仕舞いするときに注意が必要です。

前述のとおり、現物株と売り建玉が違う証券会社にありますので、品渡しができません

以前は、現物株を松井証券からauカブコム証券に移管(手数料無料)して、auカブコム証券で品渡しするという技を使っていました。
しかし今はauカブコム証券の品渡しに手数料がかかるので、この方法は意味がなくなりました。
信用建玉を他社へ移管することはできないので、松井証券で品渡しという手は使えません。

そうなると、手仕舞いするためには「松井証券で現物株を売る」「auカブコム証券で売建玉を返済する」の2取引を同時に行うことが必要になります

同時に行う理由は、同じ単価で売買しないと譲渡損が発生する可能性があるからです。
これは「クロス取引がほぼノーリスクであること」の大前提です。

具体的には、9時の前場開始前、または12時30分の後場開始前に成り行き注文を入れておくことが必要です。
一刻を争うというわけではありませんが、1日2回しかタイミングがありません。
特に後場の開始前は昼休みの1時間しか注文タイミングがないので、うっかり忘れると翌日に持ち越し(→貸株料が余計に1日分発生)となります。

注意点2:権利落ち日に複数銘柄を売ると1日50万円を超える

次に、何銘柄もクロス取引を行っている場合、権利落ち日に「1日50万円」の枠を超える可能性がある、ということに注意が必要です。

松井証券が手数料無料なのは1日50万円までで、これを超えると途端に高額の手数料がかかります。
たとえば50万超~100万円だと1100円、以降100万円ごとに1100円で上限が11万円です。

ですので、権利落ち日だからといって、何も考えずに持っている現物株を一気に売ってはいけません。

もし保有している現物株の金額が50万を超えてしまう場合には、何日かに分けて手仕舞いしていくのがよいでしょう。

貸株料は余計に発生しますが、売買手数料よりは安くつくはずです。

注意点3:高額の株は買えない

当たり前のことですが、50万円を超える株を買うと松井証券で手数料が発生しますので、この方法は使えません。

たとえば1株6000円という銘柄は完全にアウトです。

一方、1株1000円の株を600株買うという場合には、「今日300株、明日300株」のように分けて購入すれば可能ではあります。

ただし、600株のうち300株は、本来買うべき日より1日早く購入するので、その分の貸株料は余計にかかります。

注意点4:資金が分散する

これは資金豊富な方には当てはまりませんが、手持ち資金が複数の証券会社に分散することで、機動的な対応が取りづらくなるというデメリットが挙げられます。

私たちの場合、基本的にはほとんどの資金をカブドットコム証券に預けっぱなしです。
全ての取引がカブドットコム証券で完結するなら、これで何ら問題はありません。
また、預けてある現物株を担保に信用取引を行うこともできるので、限られた資金を有効に活用できます。

ところが、今回のように「現物株は松井証券で買う」となると、その分の資金をあらかじめ松井証券に移しておく必要があります

手持ち資金に余裕がなければ「カブドットコム証券から引き出して松井証券に移す」ということになりますが、これをほぼリアルタイムで済ませるには、営業日の早い時間帯に手続きする必要があります。

これを守らないと資金の移動が翌営業日以降になってしまい、「今、取引したいのに資金が別の証券会社にある」という理由でタイミングを逃す結果となります。

具体的には、カブドットコム証券の出金期限が午後(三菱東京UFJ銀行の一般的な支店の口座へは15時30分)までです。
出金はほぼリアルタイム(1時間以内)に行われると思いますが、さらにその後、松井証券へ当日中に入金するには営業日の15時までの手続きが必要です(ネットリンク入金の場合)。
結局、営業日の14時ごろまでに出金を行わないと、当日中の資金移動は無理ということです。

クロス取引は通常朝9時に行うので、翌営業日の開始時点で資金が移動していればいいのですが。

注意点5:確定申告しないと損をするかも

最後に、税金の問題について触れておきます。

最近では、株取引をする人の大半が特定口座を開設し「源泉徴収あり」で運用していると思います。
これだと確定申告は原則不要で、売買差益や配当で儲けが出た場合には、証券会社の口座から自動的に税金が引かれています。

複数の取引があっても、1年間の損益は通算されます。

しかし、損益通算ができるのはあくまで個々の証券会社の口座内に限られます

たとえば、A社の口座では1年トータルで5万円の損をしたが、B社の口座では3万円の儲けが出たという場合を考えます。
この場合、A社の口座からは税金が引かれない一方、B社の口座からは3万円の儲けに対する税金(約2割なので、だいたい6000円)が引かれます。
A社・B社を通算すれば2万円の損なのですから、本来、税金は払わなくてよいはずです。

本記事でご紹介している手法では複数の証券会社を利用するので、「松井証券では利益が出たが、auカブコム証券では損失が出た」ということが、かなりの確率で起きます。

不要に徴収された税金を取り戻すには、確定申告(還付申告)を行う必要があります

本来、クロス取引では売買差益はゼロ、配当金も実質ゼロ(現物株に対して配当金は支払われるが、信用売建玉に対して配当金調整金が発生するので相殺される)で、売買手数料や貸株料の分だけ必ず損失が出ます。
ですから、クロス取引が1つの証券会社で完結していれば税金は引かれず、また確定申告も不要です。

これが2つの証券会社にまたがることで、一方の証券会社において利益が計上され、不要に税金を徴収されてしまう可能性が高いのです。
そして税金を取り戻すには、確定申告が必要ということです。

私たちは医療費控除があるので毎年確定申告をしており、別に手間だとは思わないのですが、そうでない方にとっては若干ハードルが高いといえます。

まとめ:手数料は節約、脳力は消費

以上、auカブコム証券と松井証券の組み合わせで、手数料を極限まで抑えたクロス取引の手法をご紹介しました。

証券会社2つに口座を開設すれば誰でも真似できます。
難しくはありません。

しかし、仕組みをちゃんと理解して、かつ適切なタイミングで間違いなく行動しないと、かえって損をすることもあるでしょう。

うまくやれば本当にタダ同然で優待取りができる一方、「やるべき時にやるべきことをする」というマメさが必要です。

手数料を取るか、面倒なことを考えなくてよい単純さをとるか。
最終的には、ご自身の生活や性格などを勘案の上、実行に移していただければと思います。

子サイトはじめました!
本記事をお読みいただき、ありがとうございました。

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